母に友達はできない。

前にも書いたけれど、母には友達がいない。

家に誰一人母の友達が訪ねてきたことはないし、手紙も来なかったし、電話もなかったから、本当に1人も友達がいなかったのだと思う。

 

母に友達が1人いたら、どんなによかっただろう。

 

家族のことを相談したり、一緒にお茶して息抜きしたり。

家族とは別の世界、別の時間を過ごせる友達は必要だと思う。

そういう友達がいれば、私や妹たち相手にグダグダと父の悪口を言う必要もなかった。

 

でも

「母に友達はできないだろうな」

と思った出来事がある。

 

私が中学生の頃、母はあるスポーツのサークル活動に参加するようになった。

夫婦関係悪化の鬱憤を晴らすかのように、ちょっとやりすぎなくらいにサークル活動に参加していた。

ふだん家ではひどい格好をしていた母が、メイクをバッチリして洒落た服で出かける姿が不思議だった。

サークル活動で友達(と母は言っていた)もできて、ランチを食べに行ったりしていたようだ。

 

でもある時、サークルのメンバーの一人について、母が言った言葉をきいてすごく嫌な気持ちになった。

 

「K子さん(女性)は離婚してひとりなの。

だから仲良くはしていても影ではみんな結構K子さんのことをバカにしていたのよね。

でも▲▲(地元で知名度の高い会社)の社員だってきいて、みんなの態度が変わったのよ。

仕事って大事ね」

 

母はこのXXさんを「友達」とよんでいた。

でもこんな意地悪なことを影で言うなんて、友達でも何でもないよ。

 

母の冷たさ、意地悪さに不快感を感じながらも、私は黙って聞いていた。

 

するとさらに耳を疑うようなことを母は言った。

「その点、私(母)は◆◆(父の職業)夫人だからね」

 

心の底から、自分の母を恥ずかしいと思った。

こんな下品なことを堂々と嬉しそうに言うなんて。

 

この時すでに夫婦関係が冷えきっていて、母は散々父のことをバカにしていた。

父の仕事に関わることも、大したことないのに・・・などと悪く言っていた。

 

それなのに「◆◆夫人」って・・・。

 

きっとサークル活動の仲間に、母が本心で話せる人はいなかったと思う。

 

数年後、家を出ていった母は転居先近くで偶然その女性(K子さん)と再会した。

「昔の友達に会えたのよ!お茶したわ。」

とうれしそうに母は言っていたけれど、K子さんは母のことを決して友達だとは思っていないだろう。

 

今は別居して幸せとはいえない境遇にある母と再会して、K子さんは何を思っただろう。

 

母に言いたいこと

その発想、その言葉が残念でならない。
せめて口に出さないでほしかった。

 

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