真冬の寒い日、コートを着させてもらえず外に出された

母は食事の準備や送迎はちゃんとしてくれた。

でも冷たかった。

 

私が中学生になってまもない頃。

父が仕事帰りに私だけレストランに連れて行ってくれることになった。

たぶん、何かのお祝いだったのだと思う。

 

その日は冬で、雪がちらつく寒い日だった。

 

当時、私は自分のコートを持っていなかった。

前の年に着ていたコートはサイズアウトしていた。

 

母にお金を渡されて、近所のスーパーにコートを買いに行くように言われていた。

でも自分ひとりでコートや服を買った経験がほとんどなかった。

だからなんだか面倒で、理由をつけては先延ばしにしていた。

 

外出するときは、母のコートのうちのひとつを着て出かけていた。

そのことで、母はいつも文句を言っていた。

 

「一緒に買いに行ってくれるか、適当なコートを買ってきてほしい」

と母に言いたかったけれど、なぜか言えなかった。

言うと母の機嫌が悪くなりそうだと感じていたんだと思う。

 

父との食事の日、父は職場近くの駅のホームで私を待っている予定だった。

父に指示された電車に乗り遅れないように出かけようとした。

 

母のコートを着て玄関を出ようとした時

「コートを脱ぎなさい」

と突然母に言われた。

それは私(母)のコートだからと。

コートを買いに行かない私が悪いと。

 

ショックで暗い気持ちになったけれど、電車の時間が迫っていたから言われるままにコートを脱いだ。

そしてセーター1枚で寒さに震えながら駅までの道を20分歩いた。

特に寒い日だったから、外を歩く人はみんなコートを着ていた。

コートを着ないで寒そうに歩く私を不思議そうに見る人がいた。

 

待ち合わせの駅に到着して父に言われた言葉が忘れられない。

「こんなに寒い日に、どうしてコートを着てこないんだ。」

母から玄関でコートを脱がされたことは言えなかった。

恥ずかしくて惨めだった。

父が上着を貸してくれた。

母はきっと、私がコートを忘れて外出したと父に言ったと思う。

 

この出来事をなぜか最近頻繁に思い出す。

そして子どもを持つ前は

「さっさとコートを買いに行かなかった自分にも非がある」

と思っていた。

 

でも自分に子どもができてから疑問を持つようになった。

 

私だったら、子どもに似合いそうで暖かいコートを買ってきてあげる。

子どもが選びたかったら子どもに選ばせてあげるし、あまり服に興味がなければ私が買ってくる。

 

それに、なにより、

真冬の寒い日に、玄関でわざわざコートを脱がせて子どもを外出させない。

それが誰のコートであっても。

絶対にそんなことしない。

 

その日母はそのコートを使う予定もなかった。

母は妹たちと家にいたのだから。

 

母はおそらく、

「私が母の言うことを聞かずコートを買いに行かなかったこと」

「父と私が高級レストランで食事すること」

このふたつが気に入らなかったのだろう。

 

この出来事は、いまだにしょっちゅう思い出して辛くなる。

ものすごく意地悪。

 

母に言いたいこと
私は今でも傷ついている。絶対に許さない。
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