
母が父のことを嫌っていたのは、もちろん浮気が主な原因だけれど、父の無神経な性格にもあった。
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小学校低学年の時、家族で旅行した。
私はふだんからトイレが近かったけれど、この時は緊張もあってさらにトイレが近くなった。
宿泊した旅館は「トイレ無」の部屋だった。
私がトイレに行きたくなると、親も部屋を出て共用トイレまで付き添う必要がある。
父は何度もトイレに行く私が面倒だったのか
「そんなことじゃ、集団生活できないぞ」
と怒った。
せっかくの旅行なのに気分は台無し。
それにトイレを、自然現象を子どもにどうコントロールしろというのだろう。
自分が面倒だから子どもの能力が足りないなどと、どうして言えるんだろう。
子どもながらに理不尽だと思ったけれど、何も言い返せなかった。
私が大人になって、年老いた父を車に乗せて出かける機会が増えた。
車酔いする父は、ある時外出先でゲーゲー吐いて寝込んだ。
目的地に到着してみんなで遊ぶことを楽しみにしていた息子。
でも私が父の面倒を見ているから、何もできなかった。
父を心配そうに見守りつつも、残念そうにする息子。
父には、吐いてみんなの予定が狂ったことを一言も責めてはいない。
横になれる場所を探し、薬や飲み物を買いに行き、嘔吐物を片付け、家まで送り届けた。
でも心の中では「何度もトイレに行くようでは集団行動できないぞ」と言った父の言葉を思い出していた。
トイレに行く方がずっと迷惑をかけていないよね。
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中3の時、私の頭部には10円玉を細長くしたようなハゲがあった。
当時、私は自分の髪の毛を抜くクセがあった。
今思えば様々なストレスがあったのだと思う。
髪の分け目を変えてハゲている部分を隠すようにしていたけれど、友達は気づいて心配してくれた。
母はたぶん気づいていたと思うけど、10円玉ハゲについて何も言わなかった。
父は夕食の席で気がついて、家族全員の前で私の10円玉ハゲを笑った。
本当に無神経な父。
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ある集まりで、父の昔からの友人に会った。
お酒の席でみんな盛り上がっていた。
その父の友人に、笑いながらこう言われた。
「あなたのお父さんは、飲む・打つ・買う、なんでもアリですごいねー」
驚いてその時は何も言えなかったけれど、その場に父の娘として座っているのが恥ずかしかった。
たぶん父は、浮気していることなどを友人に詳細に自慢げに語っていたのだろう。
まともな人からしたら、浮気だけでも軽蔑される。
それを自慢げにお酒の席で話すって、どれだけマヌケなんだ。
家族で付き合いのあるグループに浮気を自慢する神経、私にはわからない