
両親の関係が悪くなって、母から父の悪口をよく聞かされた。
それ以外によく母から聞かされた話が2つある。
ひとつは、「自分(母)はモテて結婚相手は選び放題だったのに、選択を間違えた」という話。
他にプロポーズされたという相手がどんな人だったかとか、その人の仕事とか、結婚した後の生活レベル(予想ではあるけれど)まで話すことがあった。
「その人と結婚していれば、今とっても安泰だったのに・・・」
ため息混じりの言葉でいつも締め括られる。
当時、父への悪口を聞かされてすっかり洗脳されていた私は
「お母さん、その人と結婚すれば幸せだったのにね・・・まちがえちゃったね」
なんて母に同情するようなことを言った記憶がある。
もちろん、母の昔の思い出の一つとして語られていたのであれば、問題はない。
でも母の言葉からは、
「今の生活が自分の意図しているものとは違う」
「望んだようにはなっていない」
「父に対する不満がある」
そんなフラストレーションにも似た感情が伝わってきていた。
今思えば、子どもに対して何て残酷なんだと思う。
なんで子どもにそんなことを言うんだろう。
子どもにそんなことを言って、何を期待したのだろう。
「お母さんの人生、まだまだ大丈夫だよ。お母さんは素晴らしいよ」
そんなことを言って欲しかったのかな。
それがどんなに愚かしくて、子どもを傷つけるか。
そんな簡単なことに気づけないほど夫婦関係に行き詰まっていたのか。
母の言っていることは、家族も子ども(私)の存在も否定しているようなものだ。
もう一つは、「結婚して仕事を辞めていなければ、今頃職場で活躍していただろう」というもの。
高校を卒業して大手商社に就職した母。
当時のほとんどの女性がそうだったようにいわゆる「一般職」として働いていた。
その後、仕事で成果を上げて「総合職」的な職への変更を打診されていたという。
でも若かったから遊ぶことを優先にして、その話は断ったのだと言う。
「あのまま働いておけばよかった」
と専業主婦だった母が言っていた。
「でも結婚したことで、子どもたちに出会えたことは幸せだ。」
とも言っていた。
その言葉には「父と出会ったことはどうでもいいこと」というニュアンスがはっきり含まれていた。
プライドが高く、当時の状況を受け入れられなかった母。
「自分の人生はこんなはずじゃない・・・私はもっと高いところにいる人」
そんな母の心の声が聞こえてきそうだった。