
母が突然家を出ていってからは、時々外で母と会うようになった。
私は17歳か18歳だった。
会うといつも母は暗い顔をしていて、不幸そうだった。
父からの経済的な援助はなかったから、それまでのパートに加えて、他にも短時間のアルバイトをしていた。
ろくに睡眠時間も取れなかったようだ。
もちろんお金を稼がないと生きていけないから必死に働くのは理解できる。
でも母を見ていると、何だか現実逃避のために働いているように見えた。
「将来のこと、夫婦のこと、家族のことを真剣に考える必要があるんじゃない?」
と母のことを見ていつも感じた。
だから母に会うと
「なぜあんな父と離婚しないの?」
とイライラしながら聞いた。
母の答えはいつも同じ。
「親が離婚していると進学時に不利だから、あなたたち(私と妹たち)のために離婚しないの」
進学に親が離婚しているかどうかなんて、関係ないよ。
万が一、差別するような学校があったら、そこには行かないよ。
そんなことを必死に母に訴えたけど、母は離婚しなかった。
数年経つと、母はこういった。
「あなたたちが就職活動の時に親が離婚していると不利だから、まだ離婚しないよ。」
さらに数年経つと
「あなたたちが結婚するときに親が離婚していると不利だから、離婚しないよ。」
もうこの頃は、母には離婚する気はないんだとわかった。
だから私も離婚のことを言わなくなった。
実のところは、離婚するもしないも、親の人生だから、どちらでもいいと私は思っていた。
母には母の感情や事情があって、離婚を選択しなかったのだと思う。
それはそれでいいし、子どもに対して話したくないこともあると思う。
でも、離婚しないことを、子どものせいにしてほしくなかった。
父と結婚したのは母の決断、家を出ていったのも母の決断。
それなのに、その後の大事なことは考えないようにして、子どものせいにして、不幸な顔をして過ごしている母。
母が私たち姉妹に言ったセリフは、
「自分(母)が不幸なのは、子どもがいて身動きが取れないから」
と言っているのと同じだ。
今では父も母もずいぶん歳をとった。
でも離婚していない。
それはそれでいいけれど、、、
母の人生は、一体なんだったのだろう。
父と夫婦関係が修復できないと悟った時点で、
「これからの人生のこと」
「家族とのこと」
「子どもたちのこと」
を真剣に考えて、前向きに明るく生きてほしかった。
親が不幸そうにしていること、そしてそれを子どものせいにする。
これがどんなに子どもの心に影響を与えるか、母には理解できない。
自分の不幸を子どものせいにするな!